第3回となる今回は、「ドロップフレーム・ノンドロップフレーム」について解説します。
映像制作や動画編集の現場では、「ドロップフレーム(Drop Frame/DF)」「ノンドロップフレーム(Non-Drop Frame/NDF)」という言葉が使われることがあります。
どちらも映像の見た目を変えるものではなく、主にタイムコード、つまり映像上の時間やフレーム位置を管理するための数え方に関わる用語です。
この基礎知識がないと、制作会社とのやり取りで「何が問題になっているのか」が見えにくくなることがあります。たとえば、長時間のイベント記録映像で指定した位置が少しずつズレたり、複数カメラの素材を編集するときに同期確認の手間が増えたり、放送・配信用の納品仕様を確認する段階で方式の違いが関係することがあります。
今回は、映像を制作する現場の視点も交えながら、フレームの基本から、タイムコード、29.97fps、現場でドロップフレーム/ノンドロップフレームが関係するケースまで順番に解説します。
なお、ドロップフレーム/ノンドロップフレームは撮影時の設定に関わるため、後から簡単に切り替えるものではありません。
実際の制作では、編集や納品までを見据えて、制作者側が適切な方式を判断します。
発注側が方式そのものを細かく指定する必要は基本的にありませんが、用途や納品先、発注側で用意する素材の有無を共有しておくことが大切です。
シネマレイがお届けする「映像制作のキホンのキ」シリーズ。
映像制作の現場では、当たり前のように使われている撮影技術や演出手法があります。
しかし、それらは単なるテクニックではなく、視聴者に伝わりやすい映像をつくるための工夫です。
本シリーズでは、映像制作のプロフェッショナルチームが、映像づくりの基本をわかりやすく解説します。
目次
1. フレームとは?映像を構成する最小単位
2. タイムコードとは?映像上の位置を示すための番号
3. ドロップフレーム・ノンドロップフレームとは?
4. なぜ時間がズレるのか
5. なぜ29.97fpsという中途半端な数字があるのか
6. ドロップフレームとは?実時間に合わせるための方式
7. ノンドロップフレームとは?フレーム番号を連続して数える方式
8. 現場でドロップフレーム/ノンドロップフレームの設定が重要になるケース
9. ドロップフレームとノンドロップフレームはどう使い分ける?発注時に確認したいポイント
10. まとめ:ドロップフレーム/ノンドロップフレームは映像が抜けるか」ではなく「時間の数え方」の違い
1. フレームとは?映像を構成する最小単位
フレームとは、映像を構成する1枚1枚の静止画のことです。映像は、写真のような静止画が連続して表示されることで、動いているように見えます。昔のパラパラ漫画をイメージすると分かりやすいでしょう。
fps(frames per second)は、1秒間に何枚のフレームを表示するかを表す単位です。たとえば30fpsであれば、1秒間に30枚の静止画が連続して表示されます。
| fpsの例 | よく使われる場面 | 見え方のイメージ |
| 24fps | 映画、シネマ調の映像 | 少し映画らしい質感になりやすい |
| 30fps | テレビ、企業映像、一般的な動画 | 自然で見やすい印象になりやすい |
| 60fps | スポーツ、ゲーム、動きの速い映像 | 動きがなめらかに見えやすい |
映像上の時間を正確に扱うには、「何秒目か」だけでなく、「その秒の何フレーム目か」まで管理する必要があります。ここで使われるのが、次に説明するタイムコードです。
フレームレートについては、別記事「フレームレートとは?24fps・30fps・60fpsの違いと映像制作での選び方」で詳しくご紹介しています。
2. タイムコードとは?映像上の位置を示すための番号
タイムコードとは、映像の中の特定の位置を「時:分:秒:フレーム」で示すための番号です。映像の中の“住所”のようなものと考えると分かりやすくなります。
企業映像でも、インタビュー動画の修正指示やイベント記録映像の確認、長尺動画の編集などでタイムコードが役立ちます。「このあたりを修正してください」ではなく、「00:12:35:10付近のテロップを変更してください」と伝えられるため、制作側との認識違いを減らせます。
シネマレイでは、イベント記録のような複数カメラ撮影、企業紹介映像内の担当者インタビュー、工場の生産ライン撮影、商品カットやシズル表現など、撮影・編集時に細かなタイミング確認が必要な場面でタイムコードを活用しています。
3. ドロップフレーム・ノンドロップフレームとは?
ドロップフレームとノンドロップフレームは、映像のタイムコードをどのように数えるかを表す方式です。
ここで重要なのは、ドロップフレームという名前でも、実際の映像フレームが削除されるわけではないという点です。ドロップされるのは映像ではなく、タイムコード上の一部の番号です。
| 方式 | 考え方 | ポイント |
| ドロップフレーム | 実際の経過時間に近づけるため、タイムコード上の特定の番号を飛ばして数える方式 | 映像フレームが削除されるわけではない |
| ノンドロップフレーム | タイムコード上のフレーム番号を連続して数える方式 | フレーム数の管理はしやすいが、実時間とは少しずつズレる |
つまり、ドロップフレームとノンドロップフレームは「映像そのものの違い」ではなく、「時間をどう数えるか」の違いです。
4. なぜ時間がズレるのか
ドロップフレームとノンドロップフレームの違いを理解するうえで重要なのが、29.97fpsというフレームレートです。30fpsであれば1秒間に30枚のフレームを表示しますが、NTSC方式に由来する映像では29.97fpsが使われることがあります。NTSC方式は、かつて日本や北米などで主流だったアナログテレビのカラー放送規格です。詳しくは第5章で解説します。
29.97fpsは30fpsに非常に近い数字ですが、完全に同じではありません。そのため、29.97fpsの映像を30fpsとして単純に数え続けると、実際の経過時間との間に少しずつズレが生まれます。たとえば、29.97fpsの映像を30fps基準のノンドロップフレームで数え続けると、1時間で約3.6秒のズレが発生します。
なぜ29.97fpsという中途半端な数字があるのか
29.97fpsという数字は、一見すると中途半端に見えます。しかし、この数値にはテレビ放送の歴史が深く関係しています。
白黒テレビの普及からカラー放送の開始へ
もともとアメリカや日本で使われてきたNTSC方式のテレビは、白黒テレビ時代に30fpsを基準として設計されていました。当時の放送は白黒映像のみで構成されており、信号の仕組みも比較的シンプルだったため、大きな問題はありませんでした。
その後、時代とともにカラーテレビが登場します。しかし当時は、すでに白黒テレビが広く普及していました。
そのため、カラー放送を開始するにあたっては、新しいカラーテレビだけでなく、既存の白黒テレビでも放送を受信できる仕組みが求められました。
そこで、従来の映像信号にカラー情報を追加する方式が採用されましたが、新たな課題が発生します。
音声信号との干渉
カラー放送を実現するため、映像信号に「色の情報」が追加されました。しかし、その結果として色情報と音声信号が干渉するという問題が発生します。このままでは、画面にノイズが発生したり、音声に異常が出たりする可能性がありました。
そこで採用されたのが、映像の速度をわずかに遅くするという方法です。30fpsをほんの少し遅くした結果が、約29.97fpsでした。30fpsと29.97fpsの差はわずか0.1%程度しかなく、視聴者がその違いを体感することはほとんどありません。しかし、この小さな変更によって、カラー信号と音声信号の干渉を回避できるようになったのです。
ドロップフレームタイムコードの登場
こうしてテレビ放送は29.97fpsで運用されるようになりました。しかし、タイムコードは従来どおり30fpsを基準に数えられていたため、実際の経過時間とタイムコード表示の間に少しずつズレが生じるようになりました。
例えば、29.97fpsの映像を30fps基準のタイムコードで数え続けると、1時間後には約3.6秒の誤差が発生します。短時間の映像ではほとんど気にならない差ですが、長時間の収録や放送運用では無視できません。
そこで生まれたのが「ドロップフレームタイムコード」という考え方です。ドロップフレームは、タイムコード上の番号を一部調整することで、実際の経過時間とタイムコードのズレを補正する仕組みです。つまり、29.97fpsという歴史的な事情によって生まれた時間のズレを解決するために、ドロップフレームという仕組みが必要になったのです。
6. ドロップフレームとは?実時間に合わせるための方式
ドロップフレームは、実際の経過時間とタイムコード上の時間表示をできるだけ一致させるための方式です。
29.97fpsのドロップフレームでは、各分の先頭で「00」「01」のフレーム番号を飛ばして数えます。ただし、10分ごとの分ではこの処理を行いません。こうすることで、30fpsとして数えるタイムコードと、29.97fpsで進む実際の映像時間とのズレを補正します。
繰り返しになりますが、ドロップフレームで映像が欠けるわけではありません。映像そのものはそのままで、タイムコード上の番号だけを調整します。
ポイント
ドロップフレームで落ちるのは映像ではなく、タイムコード上の番号です。
「映像が欠ける」「フレームが消える」という意味ではありません。
7. ノンドロップフレームとは?フレーム番号を連続して数える方式
ノンドロップフレームは、タイムコード上のフレーム番号を飛ばさず、連続して数える方式です。
フレーム番号が一貫しているため、編集作業やフレーム単位の管理では扱いやすい場面があります。一方で、29.97fpsの映像を30fps基準で数え続ける場合、実際の経過時間とは少しずつズレが発生します。
短尺のWeb動画やミュージックビデオ、TVCMなど、実時間との厳密な一致が大きな問題になりにくい映像では、ノンドロップフレームが使われることもあります。
8. 現場でドロップフレーム/ノンドロップフレームの設定が重要になるケース
ドロップフレーム/ノンドロップフレームの違いは、普段動画を見るだけであればほとんど意識しないかもしれません。しかし、企業映像の制作現場では、長時間収録や複数カメラ撮影、納品仕様の確認などで関係することがあります。
特に重要なのは、ドロップフレーム/ノンドロップフレームは撮影時に設定するものであり、後から気軽に変更できるものではないという点です。そのため、実際の制作では、映像ディレクターや編集担当、カメラマンが編集・納品までを見据えて方式を判断し、使用するカメラの設定を揃えます。
| 場面 | 制作現場で起きやすいこと | 発注側が共有したいこと |
| イベント記録映像 | 講演やセミナーなどの長時間収録では、実時間とのズレや複数カメラの同期を考慮して撮影設定を整える必要があります。シネマレイでは、カメラごとのRECボタンのタイミングに左右されにくいよう、時計表記に合わせた運用を行うことがあります。 | 収録時間、後日編集の有無、発注側で用意するカメラ映像があるかを共有する |
| 複数カメラ撮影 | 正面、後方、手元など複数のカメラを使う場合、ドロップフレーム/ノンドロップフレームやタイムコード管理の方針を揃えておくことで、編集時の同期確認がしやすくなります。 | 発注側で撮影素材を持ち込む場合は、事前に制作会社へ相談する |
| 企業紹介映像・インタビュー | 担当者インタビューを2カメラで撮影する場合、話している内容や表情、手元などを切り替えながら編集するため、素材同士の同期が重要になります。 | インタビュー人数、撮影方法、追加で使用したい素材の有無を共有する |
| 工場の生産ライン・商品カット | 動きの速い被写体や、細かなタイミングを確認したい商品カットでは、撮影・編集時に正確な位置確認が必要になることがあります。 | 見せたい動き、確認したい工程、撮影対象のスピード感を共有する |
| 放送・配信向け納品 | TVCMでは撮影・編集時の管理と、オンエア用の納品形態で求められる方式が異なる場合があります。配信や企業VPではNDFで扱うことが多く、用途によって判断が変わります。 | 納品先、放送・配信の有無、仕様書や納品条件を共有する |
発注側がドロップフレーム/ノンドロップフレームを指定する必要は基本的にありません。ただし、発注側で用意したカメラ映像を使用する場合は注意が必要です。制作会社側の撮影設定と持ち込み素材の設定が合っていないと、編集時の同期や確認に手間がかかることがあります。
予算の都合や「せっかく撮影した素材を使いたい」という意図で、発注側のカメラ映像を併用したいケースもあります。その場合は、撮影前に制作会社へ相談しておくと、後工程での負担を抑えやすくなります。
発注担当者が覚えておきたいポイント
ドロップフレームかノンドロップフレームかを毎回指定する必要はありません。
ただし、ドロップフレーム/ノンドロップフレームは撮影時の設定であり、後から簡単に切り替えるものではありません。
発注側で用意するカメラ映像がある場合や、納品先の仕様が決まっている場合は、事前に制作会社へ共有しましょう。
「映像をどこで使うのか」「何分くらいの映像になるのか」「納品先の仕様があるのか」を共有することが大切です。
9. ドロップフレームとノンドロップフレームはどう使い分ける?発注時に確認したいポイント
ドロップフレームとノンドロップフレームのどちらを使うべきかは、映像の目的や納品条件、撮影後の編集方法によって変わります。
基本的には、実際の経過時間との一致が重要な場合はドロップフレーム、フレーム番号を連続して管理したい場合はノンドロップフレームが選ばれます。ただし実務上は、発注担当者が方式を判断するというより、制作者側が撮影・編集・納品までを見据えて決めることが多いです。
| 方式 | 向いているケース | 確認したいポイント |
| ドロップフレーム | テレビ放送、ライブ配信、イベント記録、長時間収録など、実時間との一致が重要な映像 | 納品仕様や放送・配信側の要件、複数カメラ撮影の有無 |
| ノンドロップフレーム | Web動画、短尺映像、企業VP、編集管理を重視する動画など、実時間との厳密な一致が大きな問題になりにくい映像 | 編集・納品時にタイムコードのズレが問題にならないか |
発注担当者にとって大切なのは、ドロップフレーム/ノンドロップフレームの方式や違いを細かく覚えることではありません。
映像をどこで使うのか、納品先の仕様があるのか、発注側で用意する動画やカメラ素材を併用するのかを、事前に制作会社へ共有することです。
たとえばTVCMのように納品規格が明確に決まっている場合は、制作者側がその仕様に合わせて管理します。企業紹介映像やWeb動画では、用途や納品先に応じて扱いやすい方式が選ばれます。いずれの場合も、発注側は「最終的にどこで使う映像なのか」を伝えることが、適切な設定につながります。
10. まとめ:ドロップフレーム/ノンドロップフレームは「映像が抜けるか」ではなく「時間の数え方」の違い
ドロップフレームとノンドロップフレームは、映像制作で使われるタイムコードの数え方の違いです。
映像は、フレームと呼ばれる1枚1枚の静止画が連続して表示されることで成り立っています。その映像上の位置を「時:分:秒:フレーム」で示すために使われるのがタイムコードです。
ドロップフレームは、29.97fpsの映像で実際の経過時間とタイムコードのズレを補正するために、タイムコード上の一部の番号を飛ばして数える方式です。映像そのものが削除されるわけではありません。
ノンドロップフレームは、フレーム番号を連続して数える方式です。管理しやすい場面がある一方で、29.97fpsの映像では実時間と少しずつズレが生じます。
ドロップフレーム/ノンドロップフレームは撮影時の設定に関わるため、制作側では編集や納品までを見据えて判断します。
発注担当者が技術仕様をすべて判断する必要はありません。大切なのは、「どこで使う映像なのか」「どのような素材を使うのか」「納品先に条件があるのか」を制作会社へ共有することです。
シネマレイでは、撮影や編集の技術だけでなく、映像が果たす役割や伝える目的を大切にしています。これからも「映像制作のキホンのキ」シリーズを通じて、伝わる映像づくりの考え方をご紹介していきます。
映像制作について相談したいご担当者さま
映像制作では、撮影技術だけでなく「何を伝えるのか」「どうすれば伝わるのか」という設計が重要です。
動画制作をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
おすすめ関連記事
この記事を読んだ方には、以下の関連記事もおすすめです。
|
|
関連ページ






