2025/12/11公開
企業がVR導入を検討する際、重要なポイントは「どのような設定が必要か」「運用や管理にどれほどの手間がかかるか」です。
XRデバイスやVRゴーグルは多様な種類があり、設定方法は導入シーン・用途によって大きく2つに分類されます。また、VRアプリケーションの基本的な動作や機能を理解しておくことも欠かせません。
本記事では、長年VRコンテンツ開発に携わってきた当社の視点から、代表的な設定方法や運用管理の事例をわかりやすく解説します。
目次
1.VR導入を検討する企業が押さえるべきポイント2.XRデバイスの種類と特徴
3.VR導入時に必要な設定
4.代表的なコンテンツごとの設定方法
5.運用・管理における最適化のポイント
6.まとめ|効率的なVR導入のために
1.VR導入を検討する企業が押さえるべきポイント
VR導入には「目的を明確にすること」が成功への第一歩です。
例えば、安全教育の「効率化」や「製造・建設現場の疑似体験」、展示会での「来場者体験の向上」、「製品・サービスのインタラクティブなデモ」など、目的によって選ぶべきデバイスやアプリ構成が異なります。
特に、使用環境(現場でのスタンドアロン運用か、展示会場での複数台同時運用か)を具体化しておくと、企画段階の設定要件と導入後の運用工数を大幅に削減できます。さらに、投資対効果(ROI)の視点でも「導入前のテスト運用」「想定利用回数」「保守体制」「更新頻度」を事前に見積っておくことも重要です。
2.XRデバイスの種類と特徴
XRデバイスは大きく分けて、スタンドアロン型(単体で動作するVRゴーグル)とPC接続型(高性能PCとVRゴーグルを有線で接続し、PC側で処理を行う形式)があります。
スタンドアロン型は独立しているため、展示会や研修で複数台を展開しやすいのが利点です。一方、PC接続型は高精細CGや特殊なシミュレーションに向いており、高精細に作り込んだ容量の重いCGグラフィックスや複雑なシミュレーションを安定して表示することに適しています。
企業利用では、利用目的に応じて「解像度」「トラッキング精度」「運用場所」「電源・ネットワーク制約」などを総合的に評価する必要があります。
3.VR導入時に必要な設定
一般コンシューマー向け
一般コンシューマーで主に使用されている方法は「ストアからのダウンロード」形式です。
VRゲームなどを自宅でプライベートな時間を楽しむことを目的としているため、ユーザーがストアから簡単にダウンロードし、基本設定をすればすぐに体験ができるようになっています。
アプリを販売・配布するためには、各ゴーグルのメーカーが用意したストアやSteamVRストアを経由します。スマートフォンアプリと同様に各社が設けている審査をクリアする必要があります。
企業利用向け
ビジネス用途や企業利用で主に採用されている方法は、「個別管理(スタンドアロン型)」と「一括管理(MDM・HMS利用)」の2種類です。
どちらも、お客様専用に構築されたアプリを直接VRゴーグルへインストールして使用する点は共通していますが、コンテンツの内容や管理・運用方法によって、最適な方式は異なります。
個別管理(スタンドアロン型)
企業向けVR導入で最も一般的な方法は、スタンドアロン型デバイスへの直接インストールです。
この方式は「キッティング」とも呼ばれ、ビジネス用途で広く採用されています。まず、VRゴーグルの初期設定を行い、専用に構築されたコンテンツをアプリ化してXR環境で起動できるようにします。その後、VRゴーグルへ直接インストールします。これはPCでいう「ローカル環境」で使用するアプリケーション方式に近いイメージです。
運用では、複数台のVRゴーグルを一箇所に集め、1台ずつアプリインストールを実施します。インストール作業に関する一連の対応を(更新や起動確認まで)を開発会社に任せることで、自社内での管理工数を削減できます。特に、展示会や安全教育など、安定した動作が求められる企業向けVRソリューションに最適です。
一括管理(MDM・HMS利用)
企業向けVR導入で、ゴーグルを一箇所に集めることが難しい場合や、台数が多い場合には、モバイルデバイス管理(MDM)やメーカー提供の管理サービス(HMS)を活用した一括管理が有効です。
これにより、遠隔でアプリを配布・更新でき、複数のVRゴーグルを効率的に管理できます。PCにおける遠隔管理と同様、管理者はアプリ更新やコンテンツ差し替えを一括で実施できるため、運用負荷を削減できます。
さらに、利用制限やネットワーク接続の制御、紛失時の遠隔ロックなど、セキュリティ面でも企業ポリシーに沿った運用を確立しやすくなります。
4.代表的なコンテンツごとの設定方法
VRゴーグルには、特定のアプリのみを起動できるように設定する「キオスクモード」や「開発者モード」があります。飲食店に設置されたタブレットで注文用アプリだけが表示されるイメージを持つとわかりやすいでしょう。VRゴーグルでも同様に、指定したアプリのみを使用できる環境を構築できます。
また、XRデバイスのストレージ容量には制限があるため、PCやスマートフォンと同様に、メモリを意識したアプリやコンテンツを構築する必要があります。
安全教育や展示会で使用する場合のVR
ユーザーが個別に操作を行う場合は、特定のアプリのみを起動できる「キオスクモード」を設定します。ユーザーが誤って他のアプリを操作するリスクを防ぎ、研修やイベント運営をスムーズに進められます。
なお、コンテンツの内容によってはインターネット接続を必要とせずに使用できる場合や、ローカルネットワーク内のみで動作させる設定も可能です。
クラウド連携による教育管理
高精細なCGや特殊なシミュレーションが必要なコンテンツの場合、クラウドやWebXR形式と連動することで、処理をクラウド側で行い、端末は閲覧に特化させることで負荷を分散できます。必要な教育コンテンツのみを保存し、デバイス側でのメモリ管理の負担を軽減することで、遠隔地から複数台での受講や管理を一元化する工程において大きなメリットがあります。
開発会社により「クラウドを使用せずとも、簡単に複数台のコンテンツ再生を一括管理ができるシステム」もサービス提供されています。例えば、弊社シネマレイでは「管理PCからVRゴーグル側のコンテンツ再生を制御できるシステム」を提供しています。
WEBブラウザでも見れるXRとの連動
PCやスマートフォンで利用される主要ブラウザは、VRゴーグルに対応した「WebXR形式」で提供されているものもあり、WEB上で公開するXRコンテンツをVRゴーグルでも楽しむことが可能です。但し、文字入力を行う場合にコントローラーやハンドトラッキングによる操作が必要となるため、PC・スマートフォンに加えVRゴーグルを対象にしたユーザーインターフェースへの配慮も必要不可欠です。
5.運用・管理における最適化のポイント
運用・管理における最適化のポイント
VR導入後の運用で重要なのは、更新ルーティンの確立とトラブルへの事前準備です。
まず、アプリ更新の頻度を検討し、運用まで見越した計画立案が必要となります。
例えば、一括管理機能は便利ですが、イベントで一度だけ使用する場合や、アプリの差し替えが不要なケースでは必須ではありません。社内にVRデバイスの管理者を常駐できない場合は、開発会社による訪問サポート、オンライン相談、配送手配などの外部支援を検討する必要もあります。
展示会やイベントでの注意点
展示会やイベントにてVRコンテンツを使用する場合、ネットワーク帯域の制限や出展規約による制約もあるため、事前にルールを確認することが重要です。
さらに、設営期間中に必ず運用確認とテストを行い、アプリが問題なく動作するかをチェックしてください。場合によっては、トラブルに備えて対応可能なエンジニアを展示会の現場に待機させることも推奨されます。これにより、当日の現場トラブルを最小化し、スムーズな体験提供が可能になります。
6.まとめ|効率的なVR導入のために
今回の記事ではVRの運用も意識した導入について、過去の実績や弊社ノウハウを交えながらご紹介いたしました
企業がVRを導入する際は、目的の明確化と運用設計が成功の鍵です。
安全教育や展示会、製品デモなど、利用シーンに応じて最適なXRデバイスと設定方法を選びましょう。
スタンドアロン型は複数台運用に適し、PC接続型は高精細なCGやシミュレーションに強みがあります。
さらに、MDMやHMSによる一括管理を活用すれば、遠隔でのアプリ更新やセキュリティ対策が可能になり、運用負荷を大幅に削減できます。
導入前にはテスト運用や更新ルーティンを計画し、展示会やイベントではネットワーク制約やトラブル対応も事前に準備しましょう。
効率的なVR導入は、目的に合ったデバイス選定と管理体制の構築から始まります。
シネマレイではその他多くのVR導入と運用に関するノウハウを保有しております。
「どのような方式が自社の目的やゴールに最適か」「最適な運用方法は何か」から、企業様ごとの状況に合わせて、VR導入の効果を最大化するための細やかなサポートをご提供します。
クラウドを使用せず、簡単に複数台の管理ができるシステムもご用意しております。お気軽にお問い合わせください。
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